「アフタヌーンティー」と聞くと、ちょっとおしゃれで優雅なイメージがありますよね。
実際、ホテルのラウンジやカフェで楽しむ機会も増えてきて、日本でも人気が高まっています。
でも、そもそもアフタヌーンティーって何なの?という疑問を持っている人も多いはず。
簡単に言うと、アフタヌーンティーは午後に紅茶と軽食を楽しむ習慣のこと。
主にイギリス発祥の文化で、紅茶を飲みながらサンドイッチやスコーン、ケーキなどをいただくという、まさに「優雅なひととき」を象徴する時間なんです。
ポイントは、「食事」というより「社交の場」であること。
おしゃべりしながらゆったりと過ごす時間が何より大事。
紅茶もフードも、すべてがその雰囲気を演出するための一部なんですね。
最近では、伝統的なスタイルにこだわらず、テーマ付きや季節限定のアフタヌーンティーなど、いろんなスタイルが登場しています。
そういった自由さも、この文化が愛され続けている理由のひとつかもしれません。
アフタヌーンティーの起源と歴史をひも解く
アフタヌーンティーの起源は、19世紀のイギリス貴族社会にさかのぼります。
その始まりを語るうえで欠かせないのが、ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリアです。
当時のイギリスでは、朝食と夕食の間が非常に長く、午後になると空腹を感じるのが普通でした。
アンナ夫人はこの空腹をしのぐために、午後4時ごろに軽食と紅茶を楽しむ習慣を始めたのです。
これが、アフタヌーンティーの最初のスタイルだとされています。
最初は彼女の個人的な習慣にすぎませんでしたが、次第に社交の場として定着し、貴族のあいだで広まっていきました。
やがて、ティールームやホテルでも提供されるようになり、上流階級から中産階級へと浸透していきます。
ちなみに、当時のアフタヌーンティーは、今のような三段トレイではなく、もう少し素朴で実用的なものでした。
ケーキスタンドなどが一般化するのは、ヴィクトリア朝時代に入ってからのことです。
このように、アフタヌーンティーは「おしゃれな習慣」以上に、当時の暮らしや社交文化と深く結びついた、イギリスらしい伝統なのです。
本場イギリスでのティータイム文化とその変遷
イギリスでは「ティータイム」と一言で言っても、いくつかの種類があります。
代表的なのが「アフタヌーンティー」と「ハイティー」です。
アフタヌーンティーは上流階級の間で広まり、紅茶と軽食を午後に楽しむ優雅な習慣。
一方、ハイティーは労働者階級が夕食代わりに紅茶と温かい食事を取る実用的なスタイルです。
名前に“ハイ”がつくので上位に思われがちですが、実は逆。
ハイティーはダイニングテーブル(高いテーブル)で食べるのが由来です。
また、現在のイギリスでは、ホテルやティールームで提供されるアフタヌーンティーが観光客向けに洗練された形で残っています。
テーマ性のあるセットや、有名ブランドとコラボしたプランも多く、伝統を守りつつも進化を続けています。
地方によって提供のスタイルに違いがあったり、紅茶の種類にも地域性があったりと、ティータイムは今もイギリス文化の一部として根づいています。
アフタヌーンティーの基本マナー5選【これだけ押さえればOK】
アフタヌーンティーは、見た目にも美しくて楽しい時間ですが、知っておくとより楽しめる「基本マナー」がいくつかあります。
難しいことはありませんが、ちょっとした気配りが大人のたしなみとして好印象になります。
ここでは、初めてでも安心な5つのポイントを紹介します。
1. ティーカップはソーサーごと持たない
つい両手で持ちたくなりますが、カップだけを持つのが基本。
ソーサーはテーブルに置いたままにしましょう。
2. スコーンは手で割って食べる
ナイフで切らずに、手で横に割ってジャムやクロテッドクリームを塗ります。
食べるときも、切ったり重ねたりせず、一口サイズにちぎって食べるのが上品です。
3. 紅茶のスプーンはかき混ぜたらすぐに置く
スプーンでくるくる回すときは音を立てず、混ぜ終わったらソーサーに戻します。
飲むときはスプーンをカップに入れたままにしないよう注意。
4. 食べる順番は下の段から
三段スタンドが出てきたら、基本は「下段→中段→上段」の順。
サンドイッチ(セイボリー)、スコーン、スイーツの順番で楽しむと、味のバランスも良くなります。
5. 会話と雰囲気を大切に
アフタヌーンティーは食事というよりも“時間を楽しむ場”。
料理の写真を撮るのもほどほどにして、同席する人との会話や空間を味わうのがイギリス流です。
知っておくと楽しめる!紅茶とティーフードの豆知識
アフタヌーンティーをもっと楽しむために、紅茶やフードにまつわるちょっとした豆知識を知っておくと、会話のきっかけにもなりますし、自分の好みに合った選び方もできるようになります。
紅茶の種類と選び方
アフタヌーンティーでよく提供される紅茶は、「ダージリン」「アッサム」「アールグレイ」などが代表的。
- ダージリンは“紅茶のシャンパン”と呼ばれ、軽やかで香りが高いのが特徴。
- アッサムはコクと渋みがしっかりしていて、ミルクティーにぴったり。
- アールグレイはベルガモットの香りが爽やかで、リフレッシュしたいときにおすすめです。
ティーポットで提供される場合、自分で注ぐことも多いですが、最初の一杯は少なめに注いで香りを楽しむのがポイントです。
ティーフードの基本構成
三段トレイにはそれぞれ意味があります。
- 下段(セイボリー):サンドイッチやキッシュなど、塩気のある軽食。
- 中段(スコーン):温かいスコーンには、ジャムとクロテッドクリームを添えて。
- 上段(スイーツ):ケーキやマカロン、タルトなど見た目も華やかな甘いもの。
それぞれの段を順番に食べていくことで、味の変化を楽しめるようになっているのです。
クロテッドクリームって何?
スコーンと一緒に出てくる白くて濃厚なクリーム、あれがクロテッドクリームです。
牛乳の脂肪分をゆっくり加熱して作られ、バターよりも軽やかで、ホイップクリームよりも濃厚という独特の味わいがあります。
イギリス南西部のデボンやコーンウォールが名産地として有名です。
日本で体験できる本格アフタヌーンティーのおすすめスポット
「本場イギリスのアフタヌーンティーにはなかなか行けないけれど、雰囲気だけでも味わってみたい」という人に向けて、日本国内で楽しめる本格派のアフタヌーンティースポットをいくつかご紹介します。
最近では、有名ホテルや紅茶専門店だけでなく、カフェやレストランでもアフタヌーンティーの提供が増えてきています。
季節限定やコラボ企画も多く、見た目の華やかさや写真映えする演出にも力が入っています。
都内で人気のスポット
- ザ・リッツ・カールトン東京:高層階の眺望とともに、クラシカルで上品なセットが楽しめる。
- マンダリン オリエンタル 東京:和と洋が融合した独自のメニューが魅力。
- フォーシーズンズホテル丸の内 東京:季節の素材を取り入れた繊細なティーフードが人気。
関西エリアのおすすめ
- ザ・リッツ・カールトン大阪:伝統的な英国スタイルのティールームを再現した空間で、まさに本場の雰囲気を体験可能。
- コンラッド大阪:現代的なアートと融合した空間での斬新なアフタヌーンティーが話題。
その他注目エリア
京都、横浜、名古屋、福岡などにも、地元の食材を生かしたアフタヌーンティーが楽しめるスポットが点在しています。
季節や地域によってメニューが変わるので、リピートしても飽きがきません。
予約が必要なことが多いため、訪れる際は事前にチェックしておくのがおすすめです。
まとめ:知識を深めて、もっと楽しくアフタヌーンティーを
アフタヌーンティーは、ただ紅茶とお菓子を楽しむだけの時間ではなく、イギリスの文化や歴史、そして人との時間を大切にする心が詰まった特別な習慣です。
その起源を知ることで、なぜ「午後の紅茶の時間」がこんなにも丁寧に扱われてきたのかが見えてきますし、マナーやティーフードの意味を知れば、より深くその世界に入り込めるはずです。
日本でも気軽に楽しめる場所が増えている今、ちょっとした知識を持っているだけで、体験がぐっと豊かになります。
これからアフタヌーンティーを楽しむ予定がある方も、いつか本場イギリスで体験してみたいという方も、今日の学びをぜひ活かしてみてください。
日常のなかで、ほんの少し優雅な時間を持つこと。
それが、アフタヌーンティーの本当の魅力なのかもしれません。